名 品・迷 品 A (24)

2011.07.24

銭単位1円前島貼りの点字便

今は無料の点字郵便ですが、大正時代の制度創設から1961年5月までは、それぞれの時期の最低額の料金が必要でした。ちょっとくたびれた感じの封筒ですが、その点字便の貴重な使用例を紹介いたしましょう。


第4種郵便点字便
 平塚 S28(1953).4.22 → 静岡

銭単位1円前島
新昭和切手の一員であった「1円前島密」を、グラビア化して再登場させたのがこの普通切手です。1951年4月14日発行のこの切手は、わが国初のグラビア印刷の普通切手であったことを覚えておきましょう。その後、文字の表示スタイルや刷色は変更されたものの、現在に至るまで60年以上同じ図案で製造されつづけています。他の普通切手の動植物や国宝、文化財といった図案との統一性に欠けますが、「郵便創始者」としての前島像は、特別な存在ということなのでしょう。いまでは1円切手の出番はほとんどありませんが、通貨の最低単位1円の普通切手を廃止するわけにはいかないようです。

この普通切手の発行日1951年4月時点では、まだ通貨の銭単位が残っていたので、額面表示に「00」が残されています。郵便料金表にもまだ1円未満の料金(低料第3種便、点字便の80銭)が残っていて、実際その後の5月21日に80銭額面の普通切手が発行されています。しかし同年11月の料金改定で郵便料金の銭単位は廃止され、さらに翌年には通貨としての銭単位そのものが廃止されて、1952年5月発行の記念切手「日本赤十字社75年」以降、切手の上からも銭単位を示す「00」が消え去りました。

使用例
この普通切手の発行日1951年4月時点では、郵便料金表に1円という料金は見られません。特定の用途のない単位額面切手という位置づけでした。11月の料金改定前の「初期使用例」は、それはそれで意義深いものですが、これといった使用例を思いつきません。たぶん筆者も所持していません。

それでもがんばって知恵を絞ると、2枚貼りの私製葉書、14円や24円料金の外信便の端数料金4円分、などを思いつかないでもありません。しかしこれらは、2円や4円切手の代用としての使用例にすぎません。同じ代用ならいっそ、8円封書への8枚貼りの方が気が利いているかも知れません。こういう多数貼りは間違いなく郵趣家便ですが、割り切って眺めれば豪華な気分になれそうな気もします。

しかし発行7ヶ月後の11月の料金改定によって、この1円切手にもいろいろな使われ方が生じました。中でも1円料金となった低料第3種便、点字第4種便への1枚貼り使用例は、何とかして所有しておきたいものです。翌年1952円7月には、円単位に改版された1円切手が登場したため、この銭単位1円切手の1枚貼りはなかなかの難関です。 

点字便
筆者も長い年月をかけて、ようやくこれらの適正使用例を揃えることができました。そのうちの点字便の方を、ここでお目にかけることにします。円単位切手発行後の使用である点が残念ですが、発行後1年以内ということもあり、何とか「名品の匂い」くらいは漂う品として紹介するのも許されるでしょう。

静岡県にある盲学校の先生あてに差し出された点字便で、封筒の中には、点字で打たれたこんな文書が入れられています。筆者は点字を全く読めないので、この向きでよいのかどうかわかりません。普通の郵便物とは違って、やはり点字郵便物にはこういうものがついていると、うれしさも倍増というものです。

点字便は重量がかさむことが多く、封筒が傷みがちです。消印も鮮明に押されていないことが多いものです。この点字便もだいぶくたびれた感じがしますが、何とか形を保っています。右上のカットは、開封で送られたあとでしょう。切手の印面がこすれてキズになっている点が残念です。消印は少しうすいですが、データ(平塚28.4.22前8-12)は完全に読めます。切手部分の拡大画像を下に示しておきましょう。

まあ、ケチをつけようと思えばいろいろとつけられますが、筆者にはこのあたりが身分相応の品と言えそうです。末永く大事にしたいと思っています。


この部屋のトップへ  サイトのトップへ