名 品・迷 品 A （86）

２０２５．１１．０４

銭位立山航空160円の1枚貼り

適正1枚貼りの第5地帯あて航空便はかなりの希少品、これに手の届かない収集家は第3地帯あて2倍重量航空便で我慢、というのが立山航空160円の使用例収集でしょう。適正期間後の使用例を含めて、他にも160円料金の郵便はいくつか考えられますが、その中に思いもよらない1枚貼りがありました。しかもこれには、ちょっとばかり重要な情報が付随しています。

　
沖縄あて6倍重量航空印刷物便(書留扱い)　　KESENNUMA　1959.6.26

適正期間内の1枚貼り
1951年12月1日の国際郵便料金改訂によって、新たに生じた外国あて航空便料金に合わせて発行された航空切手が立山航空です。1952年2月11日に銭単位のゼロつき切手、同年8月1日に円単位のゼロつき切手が発行されました。以後、翌年7月1日の料金改訂前日までの間が、立山航空の適正使用期間となります。

発行目的は第5地帯あて航空便書状(10g以下)や葉書ですが、この地帯に属する地域はアフリカや南米の一部の国だけでした。さほど需要の多くない極めて限られた宛先なので、1枚貼り適正使用便は希少品で、入手には運とかなりの資金が必要です。多くの収集家にとってその代用となるのが、第3地帯あて2倍重量航空便書状です。基本料金が80円だったので、2倍重量便の料金がたまたま160円となり、立山航空160円を1枚貼りで利用できることになりました。この第3地帯には米国など交流の多い国が含まれているので、この2倍重量便の入手はさほど難しくありません。

以上の他には、第3地帯あての4倍重量印刷物航空便といったあたりが、まともな1枚貼りと言えるところでしょう。16倍重量の国内あて書状(書留速達の特殊扱いをつければ10倍重量ですむ)のようなものも考えられますが、まあゲテモノの類いですね。

後の時代の1枚貼り
適正使用期間を過ぎた1953年7月以降では、55円や75円など国内便での利用を想定して増刷された額面もありますが、この160円切手にはそのような用途がありませんでした。強いていえば上でも触れた超重量級のゲテモノ便くらいです。1961年の料金改訂(6月の国内料金、10月の国際料金)までの期間では、国際航空便や国内特殊扱い料金など主な高額料金に5円の端数がつくことが多く、料金がちょうど160円となるケースはほとんどありません。大仏航空では引受時刻証明便とか配達証明便などに115円や145円切手の出番が多少はあって、それらは近年結構な高価で取引されていますが、立山160円にはそのような出番もありませんでした。

そんな中で今回の紹介品は、沖縄あての航空便に160円が1枚貼りで使用された実逓便ということになります。料金内訳は6倍重量航空便20円×6＝120円に、書留料金40円が加わり、ちょうど160円ということになりました。印刷物航空便の重量刻みは20gなので、6倍重量といっても101〜120gで、さほどのゲテモノではありません。画像のような大型封筒に書類を入れると、これくらいの重量となることは珍しくありません。書留扱いナシの8倍重量便(160gまで)も、よくありそうな実例と言えるでしょう。昭和30年代半ば頃は、この立山航空が窓口に出ていたこともまだ多かったようです。適正使用期間を大きくはずした使用例ではありますが、さほどのゲテモノ感のない品です。大型切手なので、大きな封筒に1枚だけ貼ってあってもそれなりの存在感があります。

沖縄あての書留料金
ということですが、本品をここで紹介した一番の理由は他にあります。それは40円という沖縄あて書留料金です。差し立て日は1959年6月、一般外国あて航空料金には同年4月1日改訂の料金表、国内料金には1951年11月改訂の料金表が適用されていた時期です。

すでに別記事でも詳しく触れていますが、沖縄あての郵便料金は1951年12月の国際郵便料金改訂時に、航空便料金については｢特別地帯あて｣の低料金が適用されるようになったほか、船便や特殊扱い料金のほとんどについては、対応する国内郵便と同額の特別料金が適用されるようになりました。あくまでも国際郵便物なのですが、その料金は国内便同額ということです。

ところがその国内便同額のごく一部に例外があります。1959年4月改訂の料金表では書留料金が40円と記載されていて、これは当時の国内書留料金35円より5円高い額となっています。その後1961年6月改訂の料金表でも国内料金より5円高い45円と書かれています。しかし1966年7月以降は国内便と同額です。これらの沖縄あて書留料金40円、45円は、｢国内料金と同額｣に対する数少ない例外ということになります。

以前の記事では、この例外料金がもしかしたら参考にした資料のミスプリでは？とも書いたのですが、そのようなミスプリではないことが紹介品によって証明されたことになりますね。

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