船便書状(料金16円)
落合長崎 Ｓ24(1949).1.13 → 米国
名 品・迷 品 Ｂ （11）
２０２５．０６．０１
年賀｢はねつき｣の多数貼り外信便
この年の年賀切手の「年賀葉書以外の使用例」については、すでにこの部屋に国内便を1点掲載していますが、今回の紹介品は見栄え充分な外信便です。下の画像をご覧いただくだけで説明は不要とも思いますが、一応は簡単な説明を続けておきます。
船便書状(料金16円)
落合長崎 Ｓ24(1949).1.13 → 米国
戦後初の年賀切手
一般的な話は以前の記事をご覧いただくことにして、簡単にすませましょう。前回の記事掲載後に判明した話として、この切手にはグラビアスクリーンの角度バラエティが存在することだけつけ加えておきます。角度差はわずか2度ほどですが、複数の実用版が使われた(厳密に言うと「原乾板からの製版作業が複数回行われた」)確かな証拠となります(注)。詳しくは『郵趣研究』181号をご覧下さい。
年賀葉書以外の使用例としてどんなものが考えられるかについても、前回の記事でざっと語っておきました。その中で「5枚以上貼って種々の郵便に使用した多数貼りも、見栄えのするカバーとして好む方がおられるでしょう」と書きましたが、まさしくそれに該当するカバーが今回の紹介品です。
(注)
実際にインクを詰めて印刷作業に使う実用版と、印面原図をシート状に並べた原乾板とは同一サイズで作るのが原則ですが、初期のグラビア切手では1シート大の原乾板から複数シート構成の実用版を作っていた時期もあるようです。原乾板とスクリーンをカーボンチッシュと呼ばれる特殊感光紙上で光学的に合成し、これを実用版面に貼り付けてから薬品腐食等の工程を経て実用版を作るのですが、このとき1シート大の感光紙を例えば2枚貼りつければ、2シート大の実用版になります。このような場合、同一実用版上の各シートのスクリーン角度が異なってしまう可能性が生じます。
お姿観察
米国あての船便封書で、料金16円分として田型ブロックが2枚、計8枚が貼られていてなかなか賑やかです。料金16円はこの年賀切手発行時の料金で、消印の日付も切手発行1ヶ月後という初期使用例となっています。8枚貼りなどというのは収集家が無理に作ったゲテモノ、という見方もありますが、まだ正月気分も抜けてない時期に年賀切手をたくさん貼って送ってあげるというのは、さほど不自然な行為に見えません。封筒の中味は残っていませんが、Happy
New Yearのひと言くらいは書かれていたのではと推察されます。差し出し人も受け取り人も収集家でしょうが、日本のお正月の風物を海外に知らせるという役割も果たしたことでしょう。
JAPEX2024に出品した年賀切手の作品では、この年賀切手貼りの外信便として田型1組に他の記念切手10枚をごちゃごちゃ貼った24円料金のカバーを使いましたが、その後に本品を入手しました。作品に使ったものよりずっとスッキリしたカバーで、しかも初期使用例となっています。封筒のサイズも適切です。アルバムリーフのカバーは、早速差し替えました。
それにしても当時の外信郵便料金は高かったですね。国内葉書料金の8倍ということです。今だったら最も遠い国に航空便で送っても160円ですから、85円の年賀切手2枚でおつりが来ます。