ト ピ ッ ク ス （48）

２０１３．０８．１１

配達証明・引受時刻証明便

配達証明とか引受時刻証明などという郵便制度は、普通人にはまず用のないものです。しかしどうしてもそういう特殊扱いをつけなければならない郵便物に、高額切手がこんな風に使われたこともあるという実例を、2点セットでご覧に入れましょう。

特殊扱いの中のさらに特殊な制度
郵便料金表の中に、｢特殊扱い料金｣という欄があります。その中の書留とか速達というような特殊扱いは一般人にも馴染み深い制度ですが、聞いたこともないというようなものもあります。今回話題とするのは、そんな中の配達証明と引受時刻証明ですが、それがどんな制度であるかは、名前を見れば一応は理解できることでしょう。

配達証明は、その名の通り郵便物を配達したことを証明する証明書を発行して、差出人あてに郵送するサービスです。一般書留とした郵便物にのみ付加できます。現行料金は300円ですが、ゆうパックでは無料で同等のサービスがついているのに300円も取るとは、ずいぶん高い料金です。それでも今回紹介品の時代に、書留料金の1.5倍もの料金を取っていたのに比べればマシと言えましょうか。普通人の出す郵便では、そこまでして証明書を必要とすることなどなさそうですが、別記事にも書いたように、筆者は大学紛争の時代に、レポートを提出するためにこの配達証明便を利用した(利用するように要求された)経験があります。

引受時刻証明も、その名の通りです。紹介品の封筒を見ればわかるように、その郵便物を引き受けた時刻を分単位で記録して証明するサービスです。これも一般書留とした郵便物にのみ付加できるサービスで、現行料金は300円です。これもまた一般人にはまず縁のない郵便ですが、特許の出願、鉱業権取得など、差し出し時刻の前後が権利の優先権と結びつくような場合に利用されます。しかし電子出願が普及した昨今では、どうしてもこれによらなければならない場合というのは、ほとんど存在しないのではないかと思われます。このサービスの料金が配達証明と同額であるのは、今も昔も変わらないようです。

特許関係等の書類
電子申請などという制度のなかった昔は、特許や鉱業権の出願に、これらの郵便が広く利用されたようです。しかしそれらに使われた封筒が郵趣界に出回ることはほとんどありません。そんな中で、昭和20年代から30年代にかけて、｢東京通商産業局長｣あてに差し出されたものが、郵趣界にまとまって存在します。今回の紹介品もその仲間です。どちらも宛先のすぐ近隣の郵便局から差し立てられたもので、直接出向いて提出すればよいのにと思いたくなりますが、おそらく差し出し時刻を公的に記録する必要があるために、引受時刻証明郵便による出願書提出が義務づけられていたのでしょう。

高額切手使用例としての姿
紹介品の2通は、1通目が封書基本料金8円、2通目は10円の時代のものです。特許出願の書類となると重量がかさむもので、第1種料金も基本料金内では納まらないことが多いようで、前者は2倍重量(21〜40g)、後者は3倍重量(41〜60gとなっています。

１通目は特殊扱い料金の合計が120円、これに第1種便料金16円(8円×2)が加算されて136円料金ということになります。理想の貼りあわせは書留料金用の30円切手4枚で120円分をカバーし、これに8円2枚を加貼、というあたりでしょうか。しかし国内郵便にはふだん縁のない100円という高額切手を使った、紹介品のような姿も悪くありません。136円を最小枚数の切手で貼ろうとすると、こういう貼りあわせになります。産業図案切手だけでまかなっている点も気持ちよいものです。

2通目の特殊扱い料金の合計は135円で、これに3倍重量封書料金30円(10円×3)を加えて165円という料金になっています。この時期は、第1種料金が基本重量内(20g以下)に納まれば145円という料金になったため、「大仏航空145円の適応1枚貼り」という貴重な使用例の機会を提供します。実際にそのような使用例を見たことはありますが、紹介品は重量超過のため、超過分の20円料金分を、別に貼ってあります。それでも大仏航空145円切手の国内便使用例としては、貴重なカバーです。本来の外信航空便への1枚貼り(第5地帯：アフリカ、南米あて)を含めて、気の利いた使用例を得がたいこの145円切手では、コレクションの中で立派な働きをしてくれます。

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