名品・迷品

トピックスの部屋にこんなもの(まがい物)を掲載してありますが、今回ここで紹介するのは本物です。封筒にシミが点在していて状態がイマイチですが、長年探していたカバーなので、身分不相応の大枚を叩いてゲットしました。

キジ航空の時代の詳細な料金表
キジ航空5種の半端な額面が海外あて航空便の増料金に対応したものであることは、よく知られていることと思います。戦後1951.11.30までの間の外国あて航空郵便料金は、地帯ごとに設定された10gごとの航空増料金を平面路料金に加算するシステムとなっていましたが、その最後の1949.6.1改訂料金で5つの地帯あて航空増料金は16、34、59、103、144円とされ、この料金に合わせて翌年1月に「キジ航空」が発行されたわけです。

この航空増料金制は、書状だけでなく葉書や印刷物(等)にも適用されました。その増料金は、葉書については書状と同額でしたが、印刷物については一部に例外的な低料金が設定されていました。さらにキジ航空の時代の途中1951.4.1に、地帯区分の微調整と印刷物料金の一部大幅引き下げが行われたため、話がややこしくなっています。この時代の航空料金の詳細は専門カタログにも完全に書かれてないことが多いので、下表にできるだけ詳細に示しておきましょう。

	主な該当国(当初)	(1951.4修正部分)	書状・葉書	印刷物等（当初)	(1951.4.以降)
第１地帯	朝鮮、中国、琉球、香港、マカオ		16円	7円	7円
第２地帯	フィリピン、タイ、ウェーキ、グアム、アラスカ	南洋諸島の4地区追加	34円	12円	12円
第３地帯	米国、カナダ、ハワイ、インド、パキスタン	特定国以外のアジアとオーストラリアが第4地帯から移行	59円	18円(カナダ、パキスタンは59円)	18円
第４地帯	ヨーロッパ、中米、アジア(上記以外)、オセアニア	南米北半分6国と東アフリカ4国が第5地帯から移行	103円	103円(英国、トルコは38円←注1)	36円
第５地帯	南米、アフリカ		144円	144円	41円

結局印刷物便にキジ航空が適正使用されたのは、1951年3月以前の59円(カナダ、パキスタンあて)、103円(英国、トルコ以外あて)、144円だけということになります。キジ貼りの印刷物便をあまり見かけないのも無理ありません。

キジ航空が貼られた印刷物航空便
ということで今回の紹介品ですが、スイス宛の印刷物航空便でキジ103円と茶摘み5円の併貼となっています。差し立て日は1951年4月の料金調整前ですから、これで料金は合っていることになります。封筒にシミが散らばっているのが難点ですが、印刷された模様のように見えなくもありません。平面路印刷物料金の5円分として茶摘みが貼られているのも嬉しくなります。

キジ103円貼りの航空便はありふれていて、(お値段は少々張りますが)入手にさほどの困難はありません。ただしそれはあくまでも封書の場合のこと。葉書の場合は封書より少し入手しにくい程度ですが、印刷物となるとかなりの難物です。上で触れたように、メジャーな宛先の米国・英国あての印刷物用航空料金がキジの額面と無関係な特別低料金に設定され、1951年4月以降それが全地帯あてに及んだからです。

それでも今回紹介品のような103円貼りのヨーロッパ(英国以外)あては、何とか入手できる可能性のあるものと言えるでしょう。59円貼りや144円貼りは、今まで目にした記憶もありません。もちろん目の前に現れれば手を出したくなりますが、そのためには今回の103円貼りの数倍以上の出費を覚悟しなければならないでしょう。