名 品・迷 品 Ｂ (25)

２０１４．１０．１１

吉野熊野国立公園セット貼りの外信航空便

第1次国立公園シリーズのうち、戦前発行分のすべてと戦後の「磐梯朝日」までは、4種額面のセット(＋小型シート)で発行されました。その戦後発行第1号「吉野熊野」のセット貼り使用例が、今回の紹介品です。

第3地帯あて航空便書状(料金83円＝平面路書状料金24円＋航空料金59円)
神奈川　S24(1949).8.30　→　米国

4種セット発行の戦後国立公園切手
1936年に発行が始まった第1次国立公園シリーズは、大戦のために発行が中断されていましたが、戦後の1949年になって「吉野熊野」で再開されました。国内あて・海外あて(船便)それぞれに対する葉書料金・封書料金額面の計4種発行に加えて、それら4種の組み合わせ小型シートという、戦前発行分のスタイルを継承しての発行でした。

ところが海外あての高額2種は売れ行きが悪かったため、4種セットでの発行は1952年「磐梯朝日」までで打ち切りとなり、翌年の「支笏洞爺」以降は国内向け額面料金のみの2種発行となってしまいました。この2種化には、図案の類型化防止という目的もあったと伝えられています。支笏洞爺以降は、それまでのUPU色の制約がなくなって、いろいろな刷色が使われるようになりました。

筆者の個人的好みに過ぎませんが、やはり4種発行分の方に親しみがあります。毎回のUPU色もセットごとに微妙に異なっていて、カラーキーの役割も見いだすことができます。「富士箱根の赤」とか「阿寒の赤」と言えば、どんな感じの赤色であるかが筆者にはピンときます。

セット貼りの可能性
4種の額面それぞれに適応料金があったわけですから、使用例収集では、まずそれらの目的どおり1枚貼りで使用されたカバーを入手することが目標となります。しかし普通の収集家である筆者は、まだ戦後発行分全種の1枚貼り適正使用例を揃えるところまで至っていません。何といっても、吉野熊野10円の外信船便葉書が難関です。国立公園切手の専門家たちのところに行き渡るまでは、筆者のところにこのような品物が回ってくることはありえないでしょう。

しかし1枚貼りだけが価値ある使用例ではありません。セット発行の切手に対しては、そのセットの全部の切手を(できれば1枚ずつ)貼った使用例を持っておきたいものです。国立公園のような大型切手を4枚も貼ってあると、それだけで大変豪華なカバーに見えてきます。

戦前発行分(第1集の富士箱根を除く)は額面合計が36銭で、これが外国あての書状料金20銭と書留料金16銭の合計と一致していたので、4種セット貼り書留便というスッキリした使用例が存在し、実際このようなカバーが結構残されています。本サイトでも、大屯阿里山のセット貼りを紹介してあります。戦後発行分については、4種の額面合計が吉野熊野の場合33円、富士箱根〜十和田の場合48円、中部山岳・磐梯朝日の場合53円となります。料金がこれらの額となるような例があるかと探してみました。

といったところでしょうか。黄色で示した欄は、その時期にその額面のセットが未発行であることを表します。可能性がないわけではありませんが、戦後分の4種セット貼り使用例の入手はほとんど絶望的と言ってよいでしょう。わずかに可能性があるのは、吉野熊野のセット33円貼りの第5種便速達でしょうが、発行後2年以上経ってから生じた料金なので迫力に欠けます(それでもいいから欲しいです)。

セット＋アルファ貼り
4種セットのみを貼った使用例の入手はこのように絶望的ですが、それに他の切手をもう1枚貼ってよいことにすれば、入手可能性はグンと高まります。今回の紹介品は、吉野熊野4種セットに普通切手50円を加えた、83円料金の米国あて航空便です。この83円という料金は、上表の「1949.6.1〜51.11.30」の期間に該当する料金です。米国あてというメジャーな宛先が該当するので、この料金の航空便使用例は、郵趣界に多数存在します。

この83円料金は切手発行時の料金ではありませんが、発行後2ヶ月以内に始まった料金、実際に使用されたのも5ヶ月以内、ということで、ポイントを稼いでいます。余分に加えた切手が50円という単位額面の普通切手であることも、プラス要素と言えるでしょう。消印がやや不鮮明ですが、データは何とか読むことができます。封筒が小型サイズなのもgoodです。以上の点を総合すれば、まあこの部屋で紹介する価値のあるカバーということになるでしょう。

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