船便書状(料金24円) 金沢野町 Ｓ26(1951).5.22 → チェコ
名 品・迷 品 A （87）
２０２５．１２．０１
80銭多宝塔の混貼多数貼り
1円未満の額面をもつ最後の普通切手｢80銭多宝塔｣の使用例を、これまでもいろいろご覧に入れてきましたが、今回の紹介品は外信便です。消印は和文印ですが、多宝塔を5枚も貼った賑やかなカバーです。
船便書状(料金24円) 金沢野町 Ｓ26(1951).5.22 → チェコ
80銭多宝塔とは
この切手それ自体については、すでに他の記事に書いているので、ここでは繰り返しません。銭単位をもつ最後の切手、低料3種便・点字便という特殊用途のために発行された切手であったことだけを、思い出しておきましょう。
使用例としては、すでに1枚貼り低料3種便、10枚貼り封書、80銭の額面を活用して1円20銭切手と一緒に貼って銭位を解消した料金調整便、をこの部屋で紹介してあります。2番目の紹介記事の中では、この切手を5枚または10枚まとめて4円切手や8円切手の代わりに使用できる機会をリストアップしておきました。そこに示したのは国内便だけでしたが、国際郵便でも同様の利用機会があります。海外あて郵便料金の中に4円や8円という料金はありませんが、こういう端数をもった料金なら存在します。すぐに思いつくのが船便の24円封書と14円葉書ですね。
紹介品の観察
チェコ宛の24円料金の船便封書に、5枚の多宝塔を20円普通切手とともに貼ってあります。発行翌日の差し立て、6枚の切手をきれいに見栄え良く貼ってある点など、収集家差し出しの雰囲気があふれていますが、封筒の姿それ自体は自然な姿をしています。
消印の金沢野町局は、金沢の中心地「香林坊」からも徒歩圏内にある小さな郵便局です(注)。裏面には金沢在住と思われる差出人名がタイプされていますが、Special Cancellation F.D.Cとタイプされた上に横線が引かれて抹消されています。実逓FDCとして差し出すつもりだったのを間違えたのでしょうか。中に封入するものを忘れていたのを思い出して翌日出直したとか、帰宅後ポストに投函したとか．．．。
収集家便ではあっても、この切手の使用例としては貴重です。切手展用にこのシリーズの作品をつくるとき、壁となるのはこの80銭と14円の使用例ですね。そのときこのようなカバーが活躍してくれることは、間違いありません。
注：
Googleマップのストリートビューで見ると今は小さな郵便局に見えますが、昔は集配局だったようです。この局の到着印が押された速達便をもっていました。